フリスビーキャッチ
少しずつ元気を取り戻してきた犬たちは、
この町で、のびのびと
“思いきり走る楽しさ”を
思い出していきます。

フリスビーキャッチは、
犬の国の前足のあたりにある町です。
目の前には、
どこまでも広がる海。
やさしい風が、
体をそっと押してくれます。
走り出すと、
そのまま、
どこまでも行けそうな気がしてきます。
きっと、
あの子も、
その中にいます。
まんま市場は、
犬たちの台所。

並んでいるのは、
できたてのものや、
採れたばかりのもの。
どれも、
まだ温度を持っています。
にぎやかな声に包まれて、
気づけば、
好物に手が伸びています。
フリスビーキャッチ気象台は、
この町の風を見ている場所。

大切なのは、
数字ではなく、
その日の風の気配です。
少し強い日もあれば、
やさしく包む日もあります。
その風に触れると、
体が、
自然と動き出します。
理由はなくても、
ただ、
走りたくなる日があります。
海のそばに、
静かにそびえる灯台があります。
バルーン灯台。

その先端は、
犬の顔をしています。
遠くを見つめるように、
静かに立っています。
広い海を見渡すように、
そのすべてを、
見守るように。
ときどき、
こちらに気づいたように、
少しだけ表情がやわらぐことがあります。
夜になると、
暗い海の上に、
やさしい光が落ちていきます。
その光は、
人間の国からも、
見えるかもしれません。
この町の向こうには、
大きな海が広がっています。
犬間海峡。

ゆるやかな流れの中を、
小さな船が、
静かに進んでいきます。
風にまかせて、
波にゆだねて、
行きさきは、
決まっていなくても、
かまいません。
遠くには、
まだ見ぬ景色が、
広がっています。
そして、
この先にも、
やさしい世界が
つづいていきます。
この町のどこかで、
あの子はきっと、
風の中を走っています。
そして、ときどき、
遠くの海を、
見つめています。
